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2018年2月22日木曜日

アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』の感想

■アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』の感想





http://bookmeter.com/b/4151300082

この物語のおいて特異とされているのは、序盤で登場する誘拐事件が実在の「リンドバーグ愛児誘拐事件」を参考にしていることにあります。

その時代に生きていた読者にとって、実際に起きた事件から着想を得たというのは衝撃的だったとか。現在の読者には分からないため、クリスティの凄さが伝わらないのが残念だと思います。

クリスティを敬愛する横溝正史氏が、大作『八つ墓村』を実在の事件である「津山三十人殺し」を参考にしているというのは有名な話ですが、もしかしたら少しだけクリスティを真似したのかもしれませんね。

そしてもう一つは、何と言っても事件の真相があまりに異質性かつ意外性を帯びているところにあると思います。

少し話が逸れますが、推理小説の初心者は、アガサ・クリスティの作品をなるべく早く読んでおく必要があります。もし読んでいなければ、別の似たような作品で「トリックを知ってしまう」被害に遭うかもしれません。

これから推理小説を書く人もクリスティ作品を読んでおきましょう。推理作家が一番やってみたいトリックが、クリスティによってすでに披露されている可能性があるからです。『オリエント急行の殺人』もその一つですし、そして最もタブーとされている“仕掛け”が含まれています。

クリスティの推理小説は、しばしば議論の的になることがあります。最後の真相を聞かされると必ず作家と読者の間に微妙なズレが生じてしまい、本気で犯人探しをしている読者にとっては、大いに期待を裏切られる結果になるからです。

最後には呆気なく梯子を外されてしまうため、その衝撃を「正」と取るか「否」と取るかは、勝負を挑まれた読者次第という結論に至ります。

この『オリエント急行の殺人』はシドニー・ルメット監督により映画化されましたが、豪華キャストをこれでもかと起用し、作品を忠実に再現したということで評価が高いです。小説を読むのが億劫だという方は、こちらを鑑賞されると良いかもしれませんね。

また、近年では三谷幸喜さんが日本人のキャストでドラマ化し、海外ではケネス・ブラナーさん主演で2017年に映画化されました。時代を越えて愛されている作品です。

…とはいえ、私はやはりデヴィッド・スーシェさんがポワロを演じたテレビドラマ版が一番かなと。長寿シリーズですし、吹き替え役の熊倉一雄さんの声がハマり過ぎてますからね。
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